
| チームワークやリーダーシップの重要性は、多くのビジネスパーソンが理解しています。しかし「研修を実施しても、職場でのチーム行動がなかなか変わらない」という悩みをお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。当社では約10年前、コクヨ中国法人とともにユニークな人材育成の取り組みを実践しました。それが「スラムダンク研修」です。漫画という身近な素材を通じて、チームワークとリーダーシップの本質に迫ったこの研修には、現代の組織づくりにも通じるヒントが詰まっています。 |
なぜ研修でチームは変わらないのか?
「最近の若手は、言われたことしかしない」「チームとして動いているはずなのに、なぜかバラバラに感じる」——そういった声は、多くの現場で聞かれます。
研修でチームワークの大切さを学んでも、日常業務でその行動が定着しないのはなぜでしょうか。
その背景には、「知識として理解すること」と「自分ごととして実感すること」の間にある大きな溝があります。
どれだけ優れたフレームワークや理論を学んでも、感情が動かなければ行動は変わりません。人が本当に学ぶのは、頭ではなく、心が動いたときなのです。
仕事中にスラムダンクを読んでいい!?
当社がコクヨ中国法人とともに取り組んだのが「スラムダンク研修」です。
現場で働く社員が日中の業務中にスラムダンクを自由に読めるよう「スラムダンク図書館」を社内に設置し、その内容をもとにチームワークやリーダーシップについて考えるという試みでした。
「漫画を研修に使うとは」と驚かれるかもしれません。
しかし、事前調査の結果、社内でのスラムダンクの認知度は100%。ワンピースや名探偵コナンと並び、世代を超えて通じる”共通言語”でした。
さらに、スラムダンクには個人の強さだけでなく、チームワーク、信頼関係の構築、衝突と和解など、組織づくりに欠かせないテーマが随所に描かれています。
なお、当初はワンピースでの研修も検討されましたが、ルフィが個人の力で突破していくストーリー展開が多く、チームワークの学習には適さないと判断し、スラムダンクが採用されました。
スラムダンクが語るチームワークの本質
研修では「なぜこの場面でパスが通るようになったのか」「信頼関係はどのように形成されたのか」といった問いかけを通じて、物語の背景にある行動や関係性を深く掘り下げました。
とりわけ印象的だったのが、流川の変化です。それまでパスをほとんど出さなかった流川が、試合の中でチームのためにパスを選ぶようになる場面。
この変化は、「個の強さ」と「チームへの貢献」のバランスをめぐる深い問いを参加者に投げかけました。
また、作者・井上雄彦氏の構成力は見事で、各シーンに伏線が張られており、読み返すたびに新たな学びが生まれる設計になっています。
研修のために再読した担当者の多くが、「初読時よりも多くの気づきを得た」と語っていました。
仙道vs牧のシーンに見るリーダーのあり方
研修の中でも特に印象的な題材となったのが、海南大附属と陵南の試合終盤の場面です。
残り数秒、2点ビハインドの状況で仙道がドリブルを仕掛け、シュートを沈めて同点に追いつきます。
一見するとヒーローの活躍ですが、この場面には深い意味があります。
仙道はファウルを誘発して3点を狙い、試合を自力で決めに行こうとしていました。
しかし牧はその意図を見抜き、あえてブロックに行かず「2点を許容して延長戦で勝負する」という冷静な判断を下します。
「自分で決めたい」という思いを優先した仙道と、チーム全体の勝利を見据えた牧。試合後の仙道の落胆は、その判断の差を示しています。
「自分で決める」ことと「仲間を信じて託す」こと──その差がリーダーの”器”として明確に現れるこの場面は、マンガでありながらどんなリーダーシップ論よりも鮮やかに本質を伝えていました。
研修では「仲間をどこまで信頼できるか」「リーダーはどこで個人の力を抑えるか」という問いを通じて、参加者が自らの行動を振り返るきっかけとなりました。
「体験」から学ぶことが、チームを変える
参加者からは「研修というより感動体験だった」「自分のリーダーシップを本気で振り返るきっかけになった」といった声が寄せられました。
こうした「物語の力で学びを内面化する」という考え方を、当社では Storify(ストーリファイ)と呼んでいます。
伝えるべき内容を物語の形式に変換して届けることで、知識を「他人ごと」ではなく「自分ごと」として受け取れるようにする設計思想です。
物語という媒体を通じてこそ、チームワークや信頼関係といった抽象的なテーマを、腹の底から理解できるのです。
リーダーシップやチームワークの研修を実施してきたものの、「伝わっている実感が持てない」「研修後の変化が見えない」とお感じでしたら、学びの”入口”を変えることから始めてみるのも一つかもしれません。
※本研修の詳細は東洋経済にも掲載されています。
(参考:https://toyokeizai.net/articles/-/51612)

