
| 「若手がチャレンジをしないのはなぜか?」――その背景には、失敗を避けられる環境で育ってきた世代ならではの傾向があります。正解がすぐに手に入る社会で、自ら考え試す機会が少なかった若手に必要なのは、「考えて動く」経験を安心して積める場づくり。本コラムでは、そんな育成の視点とアプローチの転換について解説します。 |
「もっと自分で考えてほしいのに…」という現場の声
「最近の若手は、言われたことしかしない」
「自分で考えて動く力が弱い。指示待ちになってしまう」
現場のマネージャーや人事担当者から、そんな声をよく聞きます。
たしかに、新入社員の中には、自分の判断で動くことに戸惑ったり、チャレンジを避ける傾向が見られることがあります。ですがこれは、「やる気がない」「能力が低い」ということではありません。
背景には、今の若手が育ってきた環境と、社会に出てから求められる働き方との“すれ違い”があります。
「失敗しない」ことが当たり前だった育ち方
2000年代に生まれた若手世代は、デジタル環境が整った時代に育っています。
生まれたときからスマートフォンやSNSが身近にあり、あらゆるものが“自分向けに最適化された状態”で届くことが当たり前でした。
こうした環境により、「試行錯誤しなくても答えにたどり着ける」経験を積んできた若者が多いという傾向があります。
また、SNSの普及により、失敗やミスが他人の目にさらされるリスクも高まりました。何気ない発言が炎上したり、記録が残ってしまうことを恐れて、「間違えたくない」「目立ちたくない」という意識が無意識に育まれているケースもあります。
その結果、「まず自分で考えて試してみる」よりも、「失敗しない方法を調べてから動く」スタイルが定着しやすいのです。
社会に出た途端、求められるのは「正解のない判断」
しかし、職場に出れば話はまったく変わります。
仕事では、いつも誰かが正解を教えてくれるわけではありません。
「前例がないけど、どうする?」「情報が足りないけど、決めなければいけない」――そんな場面に次々と直面します。
ここでつまずく若手が多いのは当然です。これまでの育ち方の中では、「自分なりに考えて動く」経験が十分に積めていない人が多いからです。
しかも、現場は忙しく、丁寧に考え方を教える時間もとれないことが多い。
上司たちも、「自分たちの新人時代とは違うな」と感じながら、うまくサポートしきれずにいます。
自律性を育てるには、「考える経験」を設計すること
では、どうすれば若手が“自分で考えて動ける”ようになるのでしょうか?
そのカギは、まず小さな「考えて動く」経験を、安心して積み重ねられる場をつくることです。
「もっと考えろ」「もっと自発的に動け」と言うだけでは難しい。
必要なのは、「試してみていい」「失敗しても学びにできる」環境の中で、少しずつ判断力や行動力を養うことです。
現実の仕事ではなかなか難しいこの経験を、代わりに提供してくれるのが体験型の学習、イマーシブラーニングです。
Hotel Quest:考えて動く力を育てる研修
たとえば、Hotel Quest は、若手から管理職層まで幅広く活用されている人気の体験型研修です。参加者は、業績が大きく悪化した架空のホテルに派遣された「コンサルタント」として、チームでホテルの再建に挑みます。
与えられた情報だけでは足りず、「調査カード」と呼ばれる200種類以上のカードから、必要な情報を自分で選び取る必要があります。
「この情報が欲しい」と自ら考え、カードを請求し、手に入れた断片的なデータをもとに「ホテルの業績悪化の原因は何か?」をチームで分析・議論していきます。

この研修では、よくある“講義→演習→発表”といった受け身型の流れではなく、仮想のストーリー世界に没入しながら、自ら情報を取りに行き、仮説を立てて行動していくことが求められます。問題解決のセオリーやロジカルシンキングの枠組みを一方的に学ぶのではなく、「実際にやってみて使いながら覚える」スタイルです。
とくに若手層にとっては、現実の仕事では避けがちな「失敗」も、この仮想のストーリー内では何度でも経験できるのがポイントです。
むしろ、「失敗しないように進める」のではなく、「あえて失敗して、そこから何を学べるか」に重きを置いています。頭の使い方、情報の見極め、チームでの意思決定の仕方――こうした実践的な力を、ゲームのように没入しながら自然と身につけることができます。
Hotel Quest は、「考えて動ける人材」を育てるために、まさに“安全に失敗できる場”を提供する研修です。
若手を変えたければ、“環境”から変える
若手が「自律的に動かない」と感じたとき、それは“本人の問題”ではなく、「動けるように育つ機会がなかった」のかもしれません。
だったら、まずは“考える練習ができる場”を用意してあげることが先です。
Hotel Quest のような体験型研修は、まさにその“最初の一歩”をつくる仕掛けです。
自律性は、「言われて身につく」ものではありません。
自分で判断して動き、うまくいったり失敗したりする中で、初めて育っていくものです。
若手に期待するなら、まずはそのための“場”を整えてあげるところから始めてみませんか?
